私たちのその手に「安心」はあるか
東京には政治や経済だけでなく、文化芸術まで、ありとあらゆるものが集中している。そこから発せられる情報や刺激や体験は、私たちを魅了して止まない。今なお人口は増え続け、令和2年元旦、1,400万人に達しようとしていた。しかも、進学や就職などで毎年40万人以上が上京。地方から東京へ、人材が吸い込まれている。
憧れはあっても、「夢」は実現しているか
働き場はあっても
暮らしに「希望」はあるか
その豊かさは「真の豊かさ」だろうか
東日本大震災発生時、東京に暮らす若者たちから、故郷に帰りたい、家族のもとに帰りたいという声が溢れ出た。憧れを体験する場所であり、成功を夢見る場所であるはずなのに、いざというときに頭をもたげる、頼れる人と場所を持たない不安。そして再び、新型コロナ・ウィルスの感染拡大は、世界中の人々を恐怖と不安で覆いつくした。若者は、一人でいることの不安に襲われ、故郷に目線を向けた。
アフター・コロナへ、
意識改革が始まっている
新型コロナ・ウィルスの感染拡大を抑制するために、不要不急の外出を控えるよう要請された。対策として始まったのが、ネットワークを活用したテレワーク。情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことで、在宅勤務、モバイルワーク、郊外のサテライトオフィスの活用などが始まった。コロナ感染が終息した後も、この働き方は新しい流れとして定着するかもしれない。東京という「一極集中」に奪われた人材が、郊外や地方に還流すれば、人材不足に一条の光がさすかもしれない。
東京がバーチャルで、
江津がリアルの時代
つまり、場所と距離を選ばなくても仕事ができる、地方で暮らしながら世界とつながることができる。「東京から一番遠いまち」と言われる江津市でも、情報は通信で、モノは物流で解決する。だったら、安心して暮らせる心地良い場所で働く方が、人生にとって幸せなのではないか。私たちは、心やすらぐ風景と人の優しさに包まれた社会に幸福を見出す。そこには、言葉では表せない安心感が息づいているから。
「日本とベトナムを若き人材でつなぎたい」
小菅扶温(コスゲ・フオン)さんという女性がいる。ベトナム生まれの彼女は、日本から出張でベトナムにやってきた生物学の研究員男性と出会い結婚。来日して20年目を迎える。介護業務の経験もあり、医療通訳もできる家庭人だったが、以前から、ベトナムと日本の架け橋になりたいと願っていた。
ベトナムには優秀な若い人材がたくさんいる。しかし、国内事情でその才能が活かしきれていない。一方日本では、地方の人材流出や少子高齢化に伴い、若い人材不足が続いていた。双方の不足を補って、互いの成長に貢献したい。その願いが、娘さんの独立を機に実現した。株式会社ヒューマンサポートジャパン、日本とベトナムの若き人材をつなぐ会社の社長である。
江津人の人柄と
ベトナムの風景に触れたこと
来日した当初は、友達がいなくて寂しかった。そんな時、日本人の優しさに触れ、不安を乗り切ることができた。その経験が、地域社会への恩返しと同じ境遇にいるベトナム人をサポートしたいという気持ちと合わさって起業へとつながった。
江津市を選んだ理由は、まちの風景がベトナムの風景にとても似ているからだとか。また、星高山の星のイルミネーションが、ベトナムの国旗に似ていることも、その理由というか、なにか不思議な“縁”を感じたようだ。もちろん、迎え入れに懸命に尽力してくれた市や経済関係者の人柄も理由に入っている。いま小菅社長は、江津市民として住民登録も済ませている。
才能のあるベトナム人が
江津人となる理由
人材不足だからといって、誰でもいいわけではない。外国から技能実習生として迎え入れても、雇用期間は3年間(条件を満たせば5年間)。慣れた頃には帰国しなければならない。しかも収入は母国への送金に消え、市内経済にはあまり役立たない。
そこで、江津市の活力となるべく、これまでにない人材紹介を提案している。小菅社長が紹介する人材は、ベトナムの4年制大学もしくは短期大学卒の資格を持ち、日本語が話せる優秀な人材で、正社員もしくは契約社員として登録することだった。そのせいもあって、過去3年で紹介した100人近い人材のうち96%は紹介先に定着している。
高い定着率の秘訣は、第一に「紹介先の地域・企業」、第二は「紹介するベトナム人」、第三に「自社のビジネス」の順で要件の優先順位をつけていること。通常の逆転発想だ。暮らすまちを愛し、能力を発揮し、生活向上を目指す。やがてその若者は日本国籍を取得し、結婚し、家族をつくり、本物の江津市民となる。そして、人が、地域が、キラリと輝く社会を創っていくことが株式会社ヒューマンサポートジャパンの夢である。
先進の“アーリーアダプター発想”が
未来を突く
マーケティングでいうイノベーター理論では、消費者の消費行動を5つに分類している。中でも、市場全体の2.5%が革新者として新しいものを積極的に取り入れる層として存在する。その層の存在を敏感に感じ取り行動する、オピニオンリーダー的存在が市場全体の13.5%存在する。この層をアーリーアダプターと呼ぶ。誰よりも先進的に、時代を興していく人たちだ。
小菅社長の目指すアフター・コロナの江津社会は、優秀なベトナム人が江津市民となって活躍する人財イノベーション社会であり、互いに刺激し合い共生する発想は、冒険心にあふれた先進的な発想に支えられて、力強く未来を突き動かしていくだろう。人材不足は幻想であって、必要なのは、発想や視点の転換なのだ。
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