もともと江津には同級生がたくさんいて、帰ることに問題はありませんでした。帰郷後、いったん職業訓練校で1年溶接科で学び直し、再就職。しかし、その会社での仕事は外仕事で、特に冬の寒さに参ってしまう。そんな頃、丸惣で鬼師をしていた親戚のおじさんから、「お前、やってみないか」と誘われたのが、入社したきっかけでした。
鬼師という職人は、他の地域では「一子相伝で受け継ぐ」といったところもありますが、丸惣など江津の瓦メーカーでは、会社で鬼師を育てていたからです。
数百年先に残る仕事にやりがいを
鬼師になってから今年で38年になります。最初の2年間は作り方を教わりますが、それ以降は自分で学んできました。なにしろ種類がたくさんあって、作り方も多種多様。自分で学ぶには限界があるので、他社の鬼師のところに足しげく通い、製造工程を何度も見せてもらい知識や技を吸収させてもらいました。普通なら嫌がられるところですが、「見に来ていいぞ」と快く受けてくださる方に恵まれたのがよかった。とにかくいろいろなものをたくさん作って、経験を重ねることが大事ですね。
現在、会社には3人の鬼師がいて、主に、お寺で使う瓦やプレスではできない大物や家紋の瓦などをつくっています。
仕事を通じて感じるやりがいや自慢できるところは、なんといっても自分でつくったものが屋根の上に残っていくこと。自分の手で生み出したものだから、よりいっそう思い入れがある。建物によっては数百年も残っていくことを思うと、やりがいを感じますね。
コツコツと出来にこだわり、その先の可能性にもこだわる
ものづくりは、自分が「その出来に納得できるか」ということが大事。屋根の見映えにもかかわるので重要です。だからこそ、良いものにこだわりつつも納期に間に合わせることに苦労しますけど。
この仕事に向いている人は、コツコツと取り組める人。そういった人は、時間がかかってもできるようになると思う。何よりもものづくりが好きということが大事ですね。
今後の私の夢は、他の業界とつなげられないか、ということ。例えば、瓦造り以外にランプシェードなどのインテリア作品や記念メダルのようなものも作ってみたい。瓦以外のものづくりの可能性を広げたいですね。だからこそ、若い人に参加してほしいと思っています。この仕事は、実際にやってみると面白い仕事なので、ぜひ、チャレンジしてほしいです。
※2018年4月時点の情報です