その後、江津市に家を建てることになって、家から近い会社の事務員として働きはじめました。でも、人付き合いが苦手なこともあって、事務の仕事より現場の仕事の方に移りたい、という気持ちになっていったんです。
そんなとき、たまたま近くの丸惣で現場作業員を募集していたため、応募したというのが入社のきっかけでした。
3分の1が女性の現場
入社して最初は積み込みの現場で働き、その後、白地かけを経て成型へ。ところが、膝を悪くしてしまい、再び白地かけの現場に戻ることに。
白地かけの仕事は、粘土を瓦の形に成型し、乾燥した後の工程です。具体的には、乾燥した瓦のキズやキレ、ソリなどをチェックし、ハンガーにかけて釉薬へとまわします。その際、チェックが甘いと悪いものがラインに流れることになります。焼きあがったものが不良品となって捨てることになるので責任のある仕事場です。
一般的には瓦の製造現場は男性のイメージがありますが、女性もけっこう多くて、丸惣では全体の3分の1が女性なんですよ。昔はもっと女性が多かった。この仕事は女性でも働きやすいので、今も20代の若い女性がたくさん働いています。
美しい瓦を造るということ
仕事ですから、ときにはツライこともあるでしょう。そんな時、乗り越える方法は、コミュニケーションだと思います。厳しいことを言われるのは、嫌味ではなく、よりよくなるためと受け取ることが大事ですね。仕事と個人を分けて考えると、仕事で厳しいことがあっても、個人的なコミュニケーションでは楽しむことができる。ここはそんな環境なんです。ですから、頑張る人、誇りを持てる人、ものづくりが好きな人に来てほしいですね。自分がつくったものがどうなったか、しっかり見て不良品が出たら次はどうすると、責任を持って考えることができる人になってほしいです。
自分が作ったものが美しい完成品として出てきたときに、やりがいを感じます。自分が担当したものが、不良品として捨てられているのをみるとすごく悲しくなる。捨てられていないときは本当にうれしい。
美しい瓦を造っていることは、私の自慢です。このまちが瓦のまちと知らずに来た私ですが、やはり瓦は美しいと思う。家を守っているという気持ちで瓦を造っています。
※2018年4月時点の情報です